滲出性中耳炎
鼓膜の内側の中耳という場所に水(滲出液)がたまる病気です。
鼻の調子が悪い(副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎)と起こりやすい病気です。
l 症状は?
軽度から中等度の難聴と耳のつまり感が主な症状です。痛みや発熱はあまり出ることはありません。小児の場合、「聞き返しが多くなる」「呼んでも返事をしない」などが症状となります。ただし、難聴が軽度の場合や片側だけの場合は、気付かれずに放置されることもありますから注意が必要です。
l 原因は?
耳管(耳と鼻をつないでいる管)機能の障害が原因になります。さらに耳管機能の障害の原因は、鼻炎や副鼻腔炎またはアデノイド増殖症が原因となります。
つまり、鼻が悪かったり、アデノイド増殖症があったりすると起こりやすい病気です。
l 治療は?(重症度や難治度などを考慮して次のような治療が行われます)
飲み薬:抗生剤(副鼻腔炎がある場合)、粘液溶解剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤などを必要に応じて使います。
鼻の治療:鼻の吸引を行った後に吸入療法を行います。
耳管通気:耳管機能改善を目的として鼻から中耳へ空気を送ります。ただし、鼻水(特に黄色いもの)が多い時は、中耳炎を悪化させることがありますので行いません。
鼓膜切開:中耳に滲出液が多く聞こえが悪い場合は鼓膜切開をして中の滲出液を除去します。鼓膜切開した穴は3~7日間で通常自然に閉じますので安心してください。鼓膜切開した直後から聞こえがよくなります。痛み止めの薬を使ってから処置しますので痛みはほとんどありません。鼓膜切開後の痛みもほとんどありません。
鼓膜チューブ留置術:
鼓膜切開をしてもすぐに再発する場合は鼓膜にシリコン製の小さいチューブを数ヶ月から数年入れておきます。診察椅子におとなしく座っていられる人なら、片側1~2分で終わります。痛みもほとんどありません。
アデノイド切除術:
アデノイド増殖症が滲出性中耳炎に悪影響を与えていると考えられる場合は、アデノイド切除術を行います。入院が必要ですので、当院の場合は、経験の豊富な病院を紹介いたします。
l 経過は?
経過は、次の3パターンに分かれます。
1. 急性中耳炎の軽症例から移行したもの
:1~2週間以内に治ることが多い。遷延(長引くこと)することは、あまりありません。
2. 急性中耳炎の重症例から移行したもの
:1~3ヶ月程度で治る事もあるが、その後、数年にわたり軽快、増悪を繰り返すことがあります。
3. 以前から滲出性中耳炎を繰り返しているもの
:10歳ぐらいまでは繰り返すことが多い。アデノイドが大きい場合はアデノイド切除をしたほうがよい場合もあります。
l 放置すると?
滲出性中耳炎による難聴は、比較的軽度ですが、長い期間放置しておくと日常生活に支障をきたしたり、学習能力の低下につながったりすることもあります。特に小学生以下のお子さんの場合、言葉を覚え、基礎学力をつける大切な時期にあたりますので、この時期の難聴は軽度であってもさまざまな学習に不利に働きます。また、まれではありますが、滲出性中耳炎を治療せずに放置すると、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎といった治療の困難な中耳炎に移行することもあります。そうなると、治療を行っても聞こえがよくならない状態になることもあります。
l 治療のコツは?
滲出性中耳炎にかかると経過が長い(数ヶ月から数年)こと、よくなったり悪くなったりを繰り返すことがこの病気の特徴です。症状がよくなっても放置せずきちんと経過観察することが難治性の中耳炎に移行することを予防する方法です。あせらず治療をお受けください。